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シオラパルクは、グリーンランド北部にあり人口70人に対して犬が300匹という、家が18、19軒しか建っていない本当に小さな村でした。
そこは、電気もガスも水道もシャワーもない所で、まったく文明とかけ離れた生活環境でした。現地には、狩猟生活をする大島さんという日本人が、18年前から住んでいて、その方からテントを貸してもらって野宿しながら、時々食事に招待されたり、何かとお世話になりました。友達も何人か出来、それぞれの家のディナーにも招かれました。ある日、現住のデンマーク人のクォーツさんと3日間、アザラシ猟に同行しました。銃声がこだまし、アザラシは生きる為に必死に逃げる。人間は生きる為に必死に追い続ける。海に浮かぶ流氷の上で仕留めたアザラシの解体作業を見ていて、不思議と残酷さを感じませんでした。生きる為には仕方がないのです。アザラシやクジラを必要以上、決して殺さないところに苛酷な条件の中で生きる人間と、自然の法則みたいなものを身近に感動しました。
また、イヌイットの若者が2人、浜に2メートル位のホワイトクジラの子供を引き上げた時、どこからともなく村の住人達が集まってきて、手に持ったナイフでクジラの皮を切り、白い油を除いて食べ始めました。口や手から真っ赤な血をしたたらし、「ママット(おいしい)」と言いながら笑顔いっぱいでほおばっています。4歳の少女も器用にナイフを使って食べています。私も教えられたとおり食べてみたら、皮はコリコリと歯ごたえがあり、あわびの身に似たおいしい味でした。
小高い丘の岩場に登ると、空には無数のアッパリアホ(渡り鳥の名前)が飛び交い、うるさい程鳴きながら遠慮なくフンを落としていく。
黒キツネがすぐ側まできて石と石の間にある鳥の巣を見つけ、ひとつひとつのぞき回っている。一つの谷間に3匹もうろうろしている光景に大自然を実感しました。
とにかく生きるきびしさ、たくました、しぶとさ、喜び、そんな強い生命力というか、あるがままの命の輝きの世界を、そして色のない世界を満喫して帰ってきましたが、その生命力というのは、竹にもつながるもので、本当に勉強になる旅でした。
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